お馬さま
幌屋をはじめて5年、ついにやって参りました。
あの、高貴なお方が!
はい、というわけでフェラーリさま初来店。
今まで話がなかったわけではないのですが、
当店で扱っているE-Z ON社では360スパイダーの幌を扱っていなかったのでお断りしておりました。
今回はオーナーさんのほうですでに幌を入手されておりまして、取り付けだけやってくれないかと。
基本的にはお持込はお断りさせていただいているのですが、
相応の工賃をいただくという条件でお受けさせていただきました。
ちなみに写真は既に仕上がった状態。
結果から申し上げますと、多少の問題はあったものの、無事に取り付けできました。
幌さえ自前で安く調達できれば、工賃ももっと抑えられるのですが・・・
いい仕事をしている仕入先を探したいと思います。
こちらは作業中。
巾が広すぎてガレージでは狭いので外で作業しています。
養生も念入りに。
普段は主に毛布とドアエッジガードで養生をしておりますが、
今回はロードスター等の数倍の工賃をいただいております故、
また万が一何かあった場合店長の首が軽く吹っ飛びます故、
養生の厳重さが違いますこと何卒ご理解賜りますようよろしくお願い申し上げますです。
格納スペースが狭いこともあって、かなりアクロバティックなたたみ方をされます。
考えた人はすごいですね、よくもまぁこんな複雑な動きを考えるものです。
しかも、それを全て油圧で制御しています。
普通、メイン動力が油圧ベースでも、細かいところは電気モーターを使ったりもするのですが、
360の場合は確認した限りでは全ての部分が油圧制御でした。
利点としては、各部にモーターを設置する必要がなく、
油圧ホースとスリムなシリンダーだけあれば動かせるので、
非常に省スペースに仕上げることが可能となります。
フェラーリの場合特にデザインと軽量性が重要となりますので、
このような方式を選択したのだろうと思います。
こんなものを開発したのはどこのどなた?
色々探りますが、開発メーカーの名称などはどこにも書いてありません。
が、幌の先端部分を見ると・・・・
ここの部分の納まり、ポルシェ996/997と全く同じです。
ウェザーストリップの形状、取り付け方もほぼ一緒。
というわけで、ポルシェと同じメーカーの開発であることは察しがつきます。
ただし、ポルシェ自体もどこに開発を委託しているのかよくわからない・・・・
まぁポルシェはフォルクスワーゲンと関係が深いですし、
実績からいってもやはりカルマンあたりかもしれません。
ところで、上の写真は古い幌ですが、強く引っ張られたのか、かなりずれてしまっております。
張替え前の幌が妙にダブダブしていたのはこれのせいかもしれません。
剥がすと接着剤だらけ。
こちらの幌は以前に一度交換をしており、全体的に少々雑な部分が見られました。
ネジも欠品が多く、ネジ穴が舐めていたり・・・
ちなみに、日本ではありません。
海外だとやはりこんなもんなのかな?
ポルシェと同じ納まりであるのならば、本来ここは両面テープで止まっているはず・・・・
と思い見てみると、
やはり両面テープの残骸が残っておりました。
実用上支障のなくなる範囲まで接着剤を除去し、オリジナル通り両面テープで施工しておきました。
両面テープでもしっかり付きますし、見た目も次回の作業性もはるかに優れています。
一方リアのとんがり部分は・・・・・
ぎゃあ、錆だらけ!!
ではなくこちらも古い接着剤。
フレーム自体は恐らくマグネシウム合金製なので、こんなふうには錆びません。
こちらは頑固すぎて除去のしようがなく、また、結局再度接着剤で貼り付ける部分でもあるので、
除去は必要最小限のレベルにとどめました。
どうせ隠れてしまいますので問題はありません。
江戸っ子は見えないところにこだわるんでぃ、こんちくしょーめ、というお方は、
さらに工賃を上乗せしていただければちまちまと剥離させていただくことも可能です。
まぁ、出来ればお断りしたいですが。
こちらはフロント~サイドのウェザーストリップ。
なぜかぼろぼろで中の金属も露出してしまっており、役目を果たしておりません。
オーナーさんには早急な交換をお勧めいたしました。
フェラーリだと、こんな部品でも10万とかしそうで恐ろしい。いや、もっとかな。
追記:なんと18万円だそうです。国産車のちょうど10倍くらいと考えておけば心構えはバッチリ?
幌を分解していくと、かなりの数のリベットが骨組内に残ります。
そのままだと中で転がってカラカラうるさいので全て除去します。
たっぷり大量に獲れました。
こちらは骨組をつないでいるベルトですが、リベットが打ってあった穴が今にも引きちぎれそう。
というわけで、幌生地で当て布をして補強しておきました。
ガッツリ貼っておいたのでたぶん当分大丈夫。
今回の車両の一番の問題点はこれ。
幌格納部のリッド先端にあるピンなのですが、これの角度が悪かったもので・・・・・
リッドが閉まるとき、本来行くべき位置を外れ下にもぐりこんでしまい、
結果リッドが正しく閉まらず、あっちもこっちも幌骨組に接触しまくり、
リッド周辺が傷だらけとなってしまっておりました。
今回、我ながらナイスなことにこの部分の角度が左右で違っていることに気づき、
必殺手曲げ加工で角度を調整させていただいた結果・・・・
ちゃんと正規の位置に一発で納まるようになりました。
何回かテストを繰り返して確認しましたが、接触は解消された模様。
浮き気味だったリッドもきちんとツライチで閉まるようになりました。
というわけでいくつかの困難を乗り越え無事交換完了。
作業後、洗車をしていて気づいたのですが、
360のスタイリングは前に行くほど低くなる、いわゆるクサビ形の前傾姿勢。
エンジンフード周りも、前に行くほど下がっています。
で、下がったその先には幌が。
水は当然低いほうに流れるので、幌リアスクリーンの下のほうに水たまりが出来ます。
普通のクルマならどう考えてもまずいので排水どうしようか?と考えるところですが、
そこはさすが天下のフェラーリ様、何の対策も一切なく、ただ単純に水たまりが出来ます。
カッコいいは正義、かっこよければそんなことはどうでもいいのです!きっと。
また、2~3分アイドリングしたあと洗車をしたのですが、
エンジンフード横のメッシュ部分から少しでも水が入ると、
ブッシュアアアァァァーー!!と梨の妖精も真っ青の派手な音とともに盛大に蒸気が湧き上がります。
どうもエキマニカバーか何かに直接水が垂れているみたいです。
えっ?なにこれ?こんなのいいの?壊れない??と心配になりましたが、
オーナーさんは雨の日も走るといっていましたし、まぁきっと大丈夫なのでしょう。
なんというか、雨水に対する配慮とかがほとんどないのですね。
そんなもん、雨の日乗るなや、ガレージしまっとけ、的な感じなのか、
そもそも細けぇこたぁどうでもいいんだよ的な感じなのか。
とにかく、非常にさっぱりした、男らしいクルマでありました、フェラーリさまは。
私にとってはそんなバカっぽさ加減が非常に魅力的に映りましたが皆様はいかがでしょう?
なにより、自宅にフェラーリが置いてあるという事実の圧倒的高揚感。
最近、少々物足りないと感じていた得体の知れぬモヤモヤの原因はこれだったのか!!
やばいです、やっぱりフェラーリはすごいです。
王者の風格。
圧倒的存在感。
そしてバカっぽさ。
もし清水草一氏と出会ったら、その日のうちに言いくるめられて買ってしまいそうです。
スーパーロングフル暴利ローンで。
しかし、無理して買ったその先には、新しい何かが見えてきそうな気がする。
クルマ好き道の真理がそこに!?
例えばです、生涯賃金が2億円だったとしましょう。
そのうちの1000万くらい、中古フェラーリにつぎ込んでもいいのではないでしょうか?
というか、さらに前向きに考えれば、もうちょっとがんばって2億を2億1,000万にすればいいのです。
たかだか人生全体で5%アップですよ。
消費税ちょっと上がったくらいの?感覚で憧れのフェラーリがあなたのものに!
というかほっといたらそのうち誰だって死ぬのです。
どうせ死ぬならば色々やっといたほうがいい。
うちのじぃちゃんバカだからフェラーリ乗ってたんだよ、と後世まで語り継がれたい。
いよいよやばいとなったら売ればいいのです。
きっと半値の500万くらいにはなるでしょう。
というわけで、NDロードスターはどこへやら、
なぜか数段飛びでフェラーリに気が行ってしまった店長。
果たして家庭は、お財布は、将来は大丈夫なのか。
To be continued