内側
こんばんは。
今回は少々珍しい、ヘッドライナー(幌内張り)だけの交換です。
お車はBMW・3シリーズカブリオレ(E46)
ACシュニッツァー仕様でバッチリ決まっています。
オーナーさんは新車からお乗りで、それはそれはもう、わが子のように大切にされておられます。
なのに、
ヘッドライナーのBピラー部が破れてしまった!
これは大変一大事、ということで、修理のご相談を頂きました。
といっても、こちらのヘッドライナー、破れこそあるものの、
それ以外は恐ろしいほど美しく張られております。
さすが純正クオリティ。
こんな美しい内張り、今まで見たこともない。
社外品でこんな仕上がり、果たして再現出来るのだろうか??
まぁ、なんでもやってみないことには進歩しないし、
「絶対純正ほど綺麗にはできないですよー」と重々お伝えしたうえで、
一か八か、レッツチャレンジ。
で、早速作業開始。
E46のBピラー周辺は複数のケーブルで複雑に引っ張られております。
幌を閉めたときにはピタッと定位置に納まり、開けるときには邪魔にならない位置に逃げる。
それを実現するため、このようにたくさんのケーブルを張り巡らされているわけですね。
逆に、この複雑な構造がトラブルの原因でもあるのですが。
幌開閉システムの開発はエドシャ社です。
ボルボ・C70と一緒のメーカーですね。
ここは今時の欧州車にしては珍しく、プラスネジを多用するのが特徴です。
新しいヘッドライナーにはBピラー部のプラスチッププレートが付いておりませんので、
古い幌から移植する必要がありますが・・・
古い幌のプレートは折れてしまっているので移植不可。
ここで、幌とは別に手配しておいた新品プレートの登場。
イギリスから取り寄せましたが、文字の位置から何から完全に一緒なので純正品?
でも、純正パーツは単体では出ないことになっています。
出所は不明ですが、クオリティはバッチリなので良しとしましょう。
上が純正、下が社外品。
純正は黒いフェルト状のインシュレーター(中綿)が入っています。
一方社外品はポリエステル綿っぽい感じのインシュレーター。
ちょっと、社外品はうすっぺらいですね。
そのせいか・・・
左が純正、右が社外品。
パンパンに張っている純正品に対し、
社外品は今ひとつ張りがなく、このままくっつけても綺麗に張れない気がします。
そこで店長考えた。
純正のインシュレーターを移植しちゃえばいいじゃん。
ということで、純正品のものを切り取って、社外品のインシュレーターの下に潜り込ませます。
インシュレーターも2重になって、遮音性アップ?
うむ、この状態ではまだシワがあるものの、だいぶ張りが出てまいりました。
ダメなら抜いてしまえばいいだけだし、これで張ってみましょう。
で、突然出来上がり!
自分で言うのもなんですが、かなり綺麗に張れました。
純正が100点満点ならば、92点くらいはいけたのではないかと思います。
2重インシュレーターのおかげもいあってか、パンパン具合は純正以上。
天井なのに、触るとソファみたいにモコモコです。
うむ、インシュレーター移植は成功だった。
もちろん、厚みがあっても問題なく畳むことが可能です。
生地がストレッチ素材になっているので、多少のシワは引っ張ることで解消されます。
なるほど、だから綺麗に張れるのですね。
しかしながら、やはりポン付けであら簡単とはいかず、色々と調整しています。
問題のBピラー部も、綺麗になりました。(張り替えたので当たり前ですが)
が、しかし、そういえばそもそもなぜ破れてしまったのか、謎のままです。
何回か開閉テストを繰り返していると・・・
毎回開けるときに、Bピラーのプレートが骨組に少し引っかかっていることに気付きました。
ここはプレートが引っかからずよく滑るように低摩擦係数のテープが張ってあるのですが、
それが破れてベタベタの接着面が露出しまい、
結果として逆に引っかかりやすくなってしまっておりました。
引っかかったまま無理に開けると・・・・骨組に挟まって破れてしまう、というわけです。
そこで、テープを全て剥がしてフェルトのテープを貼りなおし、
潤滑用のシリコンをたっぷりと染みこませました。
その結果、スルン!とよく滑り、スムーズに動くようになりました。
というわけで、思いのほか綺麗に張れたし、
原因も解消できたし、インシュレーターも増量したし、
オーナーさんも大変喜んで下さいました。
なぜか拍手までして下さいまして、思わずニンマリ。
素直に喜んでくださる方はこちらも嬉しくなります。
年明けにはジャガー・XK8の内張り交換も控えておりますので、
そちらも綺麗に出来るといいなぁ・・・
ちなみに部品はオーナーさんの持込です。
物がいいといいのですがどうでしょう。
新しい仕事はいつも戦々恐々です。
それでは、また。